凛々しい姿で知られる日本の犬種「秋田犬」(あきたいぬ)。今、日本だけでなく世界的にも人気となっている犬種です。
忠犬ハチ公の物語で世界的に有名になった秋田犬ですが、その歴史や性格、飼育の難しさなど、知るべきことはたくさんあります。この記事では、秋田犬の飼育に必要な、適切な食事、運動量、しつけ、お手入れ、かかりやすい病気とその予防策まで、具体的な情報を提供します。さらに秋田犬の起源や歴史的背景、価格の目安、ブリーダーやペットショップから入手する方法、そして里親になるという選択肢についても解説。
この記事を読めば秋田犬への理解が深まり、その魅力をより一層感じることができるでしょう。
秋田犬の魅力
秋田犬は、日本を代表する犬種の一つであり、その魅力は多岐にわたります。凛々しい見た目、飼い主への忠誠心、穏やかな性格など、多くの愛犬家たちを魅了してやまない要素が詰まっています。ここでは、秋田犬が持つ様々な魅力について解説していきます。
凛々しい容姿と豊かな毛並み
秋田犬は日本犬の中で唯一の大型犬種です。その堂々とした体格と、豊かな被毛が特徴です。がっしりとした骨格と筋肉質な体型は力強さを象徴し、見る人に威厳を感じさせます。厚めのピンと立った耳とくるりと巻いた尾も秋田犬の特徴であり、その凛々しい姿をより一層引き立てています。
- 雄:体高:67cm(64cm~70cmの間)
- 雌:体高:61cm(58cm~64cmの間)
「秋田」の名前の通り、雪山にも耐えられる厚い被毛のダブルコート(二重毛)で、寒さに強い犬種です。
雪をはじく硬くごわついたオーバーコート(上毛)と、体温を守る柔らかな毛質のアンダーコート(下毛)は、毛量が多く定期的なブラッシングが欠かせません。特に換毛期には抜け毛が多くなるため、毎日のこまめなケアが必要です。
毛色は「ハチ公」でもお馴染みの赤の他、白、虎、胡麻の4種がJKC公認カラーとされており、それぞれに独特の美しさがあります。
参考:一般社団法人ジャパンケネルクラブ
飼い主に忠実な性格
秋田犬は、飼い主に対して非常に忠実な性格で知られています。一度心を許した飼い主には、深い愛情と忠誠心を示し、生涯にわたって寄り添います。家族に対しては愛情深く接する一方、知らない人や犬には警戒心を抱く傾向があります。攻撃的になる場合もあるため、注意が必要です。
また、秋田犬は独立心が強く、自分の意思をしっかりと持っているため、しつけには根気が必要です。飼い主はリーダーシップを発揮し、愛情と厳しさを持って飼育しなければなりません。子犬の頃から適切な社会化トレーニングを行うことで、他の犬や人との良好な関係を築くことができるようになります。
日本犬ならではの落ち着き
秋田犬は、他の日本犬種と同様に、落ち着いた性格で物事に動じない冷静さを持っています。これは、古くから狩猟犬として活躍してきた歴史に由来するもので、獲物を追跡する際に冷静さを保つことが求められていたためと考えられます。また、忍耐強い一面も持っており、長時間じっと待つこともできます。
しかし、感覚鋭敏な面も持ち合わせており、少しの物音などにも敏感になってしまう場面も見受けられ、頑固な一面もあるため、しつけには一貫性が必要です。褒める時はしっかりと褒め、叱る時は毅然とした態度で接することで、信頼関係を築き、より良い関係を育むことができます。
特徴 | メリット | デメリット | 対処法 |
---|---|---|---|
忠実 | 深い愛情を示してくれる | 過度に依存する可能性がある | 適切な距離感を保つ |
警戒心が強い | 番犬に適している | 知らない人に吠えることがある | 子犬の頃からの社会化トレーニング |
独立心旺盛 | 一人で過ごす時間も楽しめる | しつけが難しい場合がある | 根気強く、一貫性のあるしつけ |
落ち着きがある | 無駄吠えが少ない | 遊びに誘っても乗ってこないことがある | 適切な遊びを提供する |
参考:アニコム損保
秋田犬の歴史
秋田犬の歴史は古く、様々な変遷を辿ってきました。忠犬ハチ公の物語によって世界的に知られるようになった秋田犬は、単なるペットではなく、日本の文化や歴史と深く結びついています。
秋田犬の起源
秋田犬の起源は江戸時代、秋田の大館地方で武士や豪農によって番犬や闘犬として飼われていた「大館犬」や、マタギ(猟師)に熊猟犬として飼育されていた「秋田マタギ犬」が祖先とされています。明治時代に入ると、闘犬人気が加速し、土佐闘犬やマスティフなどと交雑されるようになり、純血性が危ぶまれました。
しかし、明治末期から大正にかけて全国的に闘犬禁止令が発せられ、秋田犬本来の特性が失われることを危惧した人々によって、純粋な秋田犬の保存活動が始まりました。
忠犬ハチ公と秋田犬
秋田犬を世界的に有名にしたのが、忠犬ハチ公の物語です。
秋田犬のハチは、飼い主である上野英三郎博士を渋谷駅前まで毎日出迎え、上野氏が亡くなってしまった後も、渋谷駅前で帰りを待ち続けたことで知られています。ハチ公の飼い主への深い愛情と忠誠心は、多くの人々の心を打ち、秋田犬の知名度を大きく向上させました。ハチ公の銅像は現在も渋谷駅前に設置されており、待ち合わせ場所として親しまれています。
ハチ公は、大正12年(1923年)に秋田県大館市で生まれ、生後50日ほどで上野博士に譲渡されました。しかし翌年、上野博士は脳溢血で倒れ急逝してしまいます。ハチ公は上野博士亡き後もその帰りを待ち続けました。昭和10年(1935年)までの約10年間、ハチ公は渋谷駅前に通い続け、渋谷駅近くの路地で亡骸が発見されました。現在ハチ公は、青山墓地の上野博士の傍らで眠っています。
国立科学博物館にはハチ公の剥製が保存・展示されています。
参考:大館市役所 秋田犬
現代における秋田犬の保存活動
大正8年(1919年)に天然紀念物保存法が発布され、昭和2年(1927年)には秋田犬保存会が設立。血統の維持と改良の取り組みがされます。昭和6年(1931年)に、日本犬で初となる国の天然記念物に指定され、保護と保存が強化されました。
その後、日中戦争から第二次世界大戦の終戦までの間で、食糧不足や捕獲命令により、数十頭まで数を激減させられますが、戦後再び秋田犬保存会や愛犬家の尽力で、純血種としての保護と保存が行われ、その数を増やしていきました。
現在では、秋田犬は日本だけでなく世界でも飼育されるようになり、血統書発行や展覧会開催など、様々な活動が行われています。
年代 | 出来事 |
---|---|
江戸時代 | 大館犬・秋田マタギ犬が誕生 |
1800年代(江戸末期)~1908(明治41)年 | 闘犬として人気が高まり交雑される |
1919(大正8)年 | 天然紀念物保存法 |
1927(昭和2)年 | 秋田犬保存会設立 |
1931(昭和6)年 | 天然記念物指定 |
秋田犬は、公益社団法人秋田犬保存会によって血統書が発行されています。
詳しくは、公益社団法人秋田犬保存会をご確認ください。
秋田犬の価格相場
秋田犬を迎えるにあたって、価格相場は事前に把握しておきたい重要なポイントです。入手経路や血統、年齢などによって価格が大きく変動します。毎月の飼育費も考慮し、慎重に検討しましょう。
秋田犬の子犬の価格
秋田犬の子犬の価格は、およそ10万円~30万円です。 参考:みんなのブリーダー2024年11月現在
血統や毛色、ブリーダーの知名度などによって価格は大きく変動します。チャンピオン犬の血統を持つ子犬や希少な毛色の場合は、相場より高額になることも珍しくありません。
ブリーダーからの購入費用
ブリーダーから秋田犬の子犬を購入する場合、子犬の価格に加えて、血統書発行費用やワクチン接種費用、健康診断費用などが別途かかります。これらの費用も考慮に入れて、予算を立てましょう。信頼できるブリーダーを見つけることが、健康で性格の良い子犬を迎えるための第一歩です。
ブリーダーからの購入費用詳細
項目 | 価格相場 |
---|---|
子犬の価格 | 10万円~40万円 |
血統書発行費用 | 5,000円~1万円 |
ワクチン接種費用(一回あたり) | 5,000円~1万円 |
健康診断費用 | 5,000円~1万円 |
ペットショップからの購入費用
ペットショップでの秋田犬の販売は珍しいとされています。ペットショップの販売されている場合は、ブリーダーから購入するよりも価格が低いこともありますが、必ずしも健康状態が良いとは限らないため注意が必要です。購入前に健康状態や血統をしっかりと確認し、疑問点があれば店員に質問しましょう。
ペットショップでは、ワクチン接種費用やマイクロチップ装着費用など、これらを含めた店独自の安心パックの費用が別途かかる場合があります。
ペットショップからの購入費用詳細
項目 | 価格相場 |
---|---|
子犬の価格 | 15万円~35万円 |
ワクチン接種費用(一回あたり) | 5,000円~1万円 |
マイクロチップ装着費用 | 5,000円~1万円 |
店独自の安心パック | 3万~6万円 |
飼育費について
秋田犬を飼育するには、毎月の飼育費も必要です。年間にすると50万円以上かかるとされています。
ドッグフード、トイレシート、おもちゃ、予防医療費、トリミング費用など、様々な費用が発生します。さらに、しつけ・トレーニング費用も必要となることが多い犬種です。
病気の際には医療費がかかり、大型犬である秋田犬は、小型犬に比べて医療費も高額になります。
これらの費用を事前に見積もり、無理なく飼育できるか検討しましょう。
項目 | 月額相場 |
---|---|
ドッグフード | 5,000円~1万円/月 |
トイレシート | 3,000円~5,000円/月 |
予防医療費(予防接種、フィラリア予防など) | 2,000円~/月※予防薬 ~1万円/年※ワクチン接種 |
トリミング費用 | 5,000円~1.5万円/回 |
保険費用 | 3万円~7万円/年 |
その他(おやつ、シャンプーなど) | 1,000円~5,000円/月 |
秋田犬の入手方法
秋田犬を家族に迎え入れる方法はいくつかあります。それぞれメリット・デメリットがあるので、ご自身の希望に合った方法を選びましょう。
ブリーダーから購入する
ブリーダーから購入する場合は、親犬を見ることができ、血統や健康状態を確認できるというメリットがあります。性格や飼育に関するアドバイスをもらえることも大きなメリットです。信頼できるブリーダーを見つけることが重要です。
信頼できるブリーダーの探し方
- 秋田犬保存会などのブリーダーリストを活用する
- インターネットで評判を調べる
- 実際にブリーダーに会い、飼育環境や親犬の状態を確認する
見学の際には、親犬の健康状態や飼育環境だけでなく、ブリーダーの人柄や犬への愛情も確認しましょう。疑問点があれば遠慮なく質問し、納得した上で購入を決めることが大切です。
ペットショップから購入する
ペットショップで購入するメリットは、子犬を直接見て選ぶことができ、すぐに連れて帰ることができる点です。しかし、ペットショップによっては、飼育環境が劣悪な場合や、健康状態に問題がある子犬を販売している場合もあるため注意が必要です。購入前に、ペットショップの評判や子犬の健康状態をよく確認しましょう。
また、生後2か月ほどの早い段階で、親元から離されているので、犬の社会化を学んでいない場合がほとんどです。飼育のさいには社会化を身につけさせるしつけ・トレーニングが課題となります。
ペットショップで子犬を選ぶ際の注意点
- 子犬の健康状態(目ヤニ、鼻水、便の状態など)をチェックする
- 飼育環境の清潔さを確認する
- 店員に子犬の性格や育て方について質問する
信頼できるペットショップを選ぶことが、健康な子犬を迎えるための第一歩です。
里親になる
里親になることは、新しい家族を必要としている秋田犬に愛情を注ぐことができる素晴らしい方法です。保護団体や愛護センターなどを通して里親になることができます。成犬の場合、すでに性格や癖が形成されているため、気難しく環境の変化に敏感で、人に懐かない・怯えてしまう子が多くいます。初めて犬を飼育するという人には、里親は難しい選択肢です。どしても里親からという場合は、飼育前にしっかりと情報を得て、必ずトライアル期間を設けましょう。
里親になるための手順
- 保護団体や愛護センターに連絡を取り、里親希望を伝える
- 面談や家庭訪問など、里親としての適性を審査される
- トライアル期間を経て、正式に里親となる
それぞれのメリット・デメリット
入手方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
ブリーダー | 親犬を見ることができ、血統や健康状態を確認できる。飼育に関するアドバイスをもらえる。 | 信頼できるブリーダーを見つける必要がある。人気のブリーダーの場合は予約がとれない。 価格が高め。 |
ペットショップ | 子犬を直接見て選ぶことができ、すぐに連れて帰ることができる。 | 飼育環境が劣悪な場合や、健康状態に問題がある子犬を販売している場合もある。価格が高め。 |
里親 | 新しい家族を必要としている犬に愛情を注ぐことができる。費用が比較的安い。 | 成犬の場合、すでに性格や癖が形成されている。懐かない可能性も。医療費がかかる場合もある。 |
どの方法で秋田犬を迎える場合でも、生涯にわたって責任を持って飼育する覚悟を持つことが重要です。事前にしっかりと情報収集を行い、家族とよく相談した上で、最適な方法を選びましょう。
秋田犬の飼育方法
秋田犬は大型犬であり、日本犬特有の性質も持っているため、飼育にはそれなりの準備と覚悟が必要です。責任を持って生涯に渡り愛情を注いであげられるように、飼育方法をしっかりと理解しましょう。
適切な食事
秋田犬は年齢、年齢、運動量によって必要な栄養が異なります。子犬期には成長に必要な高栄養な子犬用ドッグフード、成犬期には適切なカロリーと栄養バランスを維持できる成犬用ドッグフード、シニア期には消化吸収に配慮したシニア犬用ドッグフードを与えましょう。肥満を防ぐためにも、給餌量はパッケージの指示に従い、適宜調整します。おやつは与えすぎないように注意し、与える場合は主食の量を調整するなどバランスに気をつけることが大切です。
食事の回数も子犬期は1日3~4回、成犬期は1日2回を目安とします。常に新鮮な水を用意することも忘れずに行いましょう。
必要な運動量
秋田犬は大型犬で、運動欲求が高い犬種です。毎日1時間程度の散歩は必須で、朝晩2回に分けて散歩に連れて行くのが理想的です。散歩だけでなく、ドッグランなどで自由に走り回らせる時間も確保することで、ストレス発散にもなります。ただし、暑さには弱い犬種なので、夏の暑い時期や湿度の高い環境では熱中症のリスクがあります。夏場は涼しい時間帯を選び、こまめな水分補給を心がけ、体を冷やせるアイテムも活用しましょう。
子犬期は骨格が未発達なため、激しい運動は避け、成長に合わせて徐々に運動量を増やしていくことが大切です。
しつけの方法
秋田犬は飼い主に忠実で賢い犬種ですが、独立心も強いため、しつけには根気が必要です。子犬の頃から、基本的なコマンド(「おすわり」「待て」「ふせ」「来い」など)をしっかりと教えましょう。褒めて伸ばすことを意識し、成功したらおやつや褒め言葉でしっかりと褒めてあげましょう。叱る場合は、いけないことをした直後に短く、低い声で叱ることが効果的です。体罰は絶対に避けましょう。
社会化期に他の犬や人との交流を積極的に行うことで、問題行動の予防にも繋がります。
しかし、秋田犬は咬傷の発生率が高い犬種です。家族以外の人や犬との交流時には、決して目を離したりリードを手から離してはいけません。常に「待て」のコマンドができるようにしておきましょう。
しつけに不安がある場合は、ドッグトレーナーに相談するのも良いでしょう。
参考:アニコム損保
お手入れの方法
秋田犬はダブルコートの豊かな被毛を持つため、定期的なブラッシングが欠かせません。特に換毛期には抜け毛が多くなるため、毎日ブラッシングを行いましょう。
シャンプーは月に1回程度が理想です。シャンプー後はしっかりと乾かさないと皮膚病の原因になるため、ドライヤーを使って、毛の根本まで完全に乾かしましょう。耳掃除、爪切り、歯磨きなども定期的に行い、清潔を保つことが大切です。自宅でのシャンプーが難しい場合は、トリミングサロンを利用しましょう。
かかりやすい病気と予防策
秋田犬がなりやすいとされる主な病気は、下記となります。
病気 | 症状 | 予防策・治療法 |
---|---|---|
股関節形成不全 | 歩行異常、痛み | 予防法 / なし 治療法 / 運動制限・体重管理・痛みを軽減させる内科治療などを行い、重度の場合は手術 |
胃拡張胃捻転 | 嘔吐、腹部膨満、呼吸の乱れ、ショック症状 | 予防法 / 飲食後の激しい運動を避ける・食事回数を増やし、1回の食事量を減らす・早食いを避ける 治療法 / 病院での緊急処置が必須 |
進行性網膜萎縮症 | 光に対すし敏感、夜盲症、視野狭窄、視力低下、失明 | 予防・治療法ともになし 発症後は、家具配置を固定するなど生活環境を調整し生活のしやすさを手助けする |
ぶどう膜皮膚症候群 | 眼の異常(対光反射低下.眼瞼痙攣.角膜炎など)、失明 皮膚の異常(皮膚被毛の脱色) | 予防法 / なし 治療法 / 点眼や投薬治療 |
参考資料:犬の股関節形成不全 / 胃拡張胃捻転 / 秋田犬の進行性網膜萎縮症 / ぶどう膜皮膚症候群
股関節形成不全や進行性網膜萎縮症など遺伝的素因が関与する疾患です。予防法がない場合もありますが、治療によっては改善することや、病気の進行を遅らせることがでいる可能性もあります。
秋田犬は、皮膚疾患になることも多いので、毎日のブラッシングや触れあいなどで、皮膚に異常がないかを常に見てあげるようにしましょう。
定期的な健康診断は、早期発見・早期治療に繋がるためとても重要です。また、適切な食事、運動、お手入れを行うことで、病気の予防にも繋がります。ワクチン接種やフィラリア予防も忘れずに行いましょう。
まとめ
この記事では、忠犬ハチ公で世界的に有名な秋田犬の歴史、価格、入手方法、飼育方法について解説しました。
秋田犬には多くの魅力があり、愛情深く育てれば、かけがえのない家族の一員となるでしょう。
この記事が、秋田犬を迎えるにあたっての参考になれば幸いです。