愛犬の健康に不安を感じた時、飼い主としてまず気になるのは「どんな病気が考えられるのか?」そして「すぐに病院へ連れて行くべきなのか?」ではないでしょうか。この記事では、犬によく見られる病気の症状を分かりやすく早見表にまとめ、写真ではなく文章で解説することで、より多くの症状を網羅しています。
「食欲不振」「嘔吐」「下痢」といったよくある症状から、「痙攣」「呼吸困難」などの緊急性の高い症状まで、幅広く網羅しているので、愛犬の状態に合った情報がすぐに見つかります。さらに、それぞれの症状から考えられる病気、そして病院へ行くべき目安を獣医師が監修した情報をもとに解説。犬の病気の予防方法も紹介しているので、日々の健康管理にも役立ちます。
この記事を読むことで、愛犬の異変にいち早く気づき、適切な対応ができるようになるでしょう。安心して愛犬との生活を送るためにも、ぜひ参考にしてください。
犬の病気と症状早見表
この早見表はあくまでも目安です。愛犬に異常が見られた場合は、自己判断せずに獣医師に相談しましょう。
症状から探す
症状 | 考えられる病気 | 受診の目安 |
---|---|---|
食欲不振 |
感染症(パルボウイルス感染症、ジステンパーなど)、寄生虫症、胃腸炎、膵炎、歯周病、異物誤飲、ストレス、腫瘍など |
半日以上続く場合、元気がない場合はすぐに受診 |
嘔吐 |
感染症、胃腸炎、膵炎、異物誤飲、中毒、腎不全、熱中症など |
繰り返す場合、血が混じる場合、ぐったりしている場合はすぐに受診 |
下痢 |
感染症、寄生虫症、胃腸炎、膵炎、ストレス、食物アレルギーなど |
血が混じる場合、1日以上続く場合、元気がない場合はすぐに受診 |
咳 |
ケンネルコフ、気管虚脱、肺炎、心臓病、フィラリア症など |
長く続く場合、呼吸が苦しい場合はすぐに受診 |
発熱 |
感染症、熱中症、腫瘍、自己免疫疾患など |
ぐったりしている、食欲がない場合はすぐに受診 |
元気消失 |
様々な病気の可能性があります。上記症状と合わせて確認 |
いつもと様子が違う場合は受診 |
皮膚のかゆみ |
ノミ、ダニ、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、細菌感染、真菌感染など |
かきむしって傷ができている場合、脱毛を伴う場合は受診 |
脱毛 |
ノミ、ダニ、アレルギー性皮膚炎、ホルモン異常、栄養不足など |
脱毛が広範囲に及ぶ場合、皮膚に異常がある場合は受診 |
呼吸困難 |
気管虚脱、肺炎、心臓病、熱中症など | すぐに受診 |
ふらつき |
低血糖、貧血、脳疾患、中毒など | すぐに受診 |
痙攣 |
てんかん、中毒、低カルシウム血症、脳疾患など | すぐに受診 |
よだれ |
熱中症、中毒、歯周病、口腔内の異物など |
大量のよだれ、嘔吐を伴う場合はすぐに受診 |
目ヤニ |
結膜炎、角膜炎、アレルギー、異物など |
目ヤニが黄色や緑色になる、目が充血している場合は受診 |
鼻水 |
感染症、アレルギー、異物、腫瘍など |
鼻水が黄色や緑色になる、くしゃみや咳を伴う場合は受診 |
参照:獣医師監修うちの子おうちの医療辞典、犬と猫のペット保険はFPC
病気から探す
以下は代表的な犬の病気です。この他にも様々な病気があります。
感染症
症状 | |
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犬パルボウイルス感染症 | 激しい嘔吐や下痢を引き起こす、致死率の高い感染症です。子犬は特に注意が必要です。 |
犬ジステンパー | 発熱、呼吸器症状、消化器症状、神経症状など様々な症状を引き起こす感染症です。 |
ケンネルコフ | 咳が主な症状の呼吸器感染症です。他の犬への感染しやすいため、注意が必要です。 |
レプトスピラ症 | 細菌感染によって引き起こされる人獣共通感染症です。発熱、嘔吐、黄疸などが現れます。 |
寄生虫症
症状 | |
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フィラリア症 | 蚊によって媒介される寄生虫症です。心臓や肺に寄生し、重症化すると死に至ることもあります。 |
ノミ | 激しいかゆみや皮膚炎を引き起こします。また、瓜実条虫の中間宿主でもあります。 |
マダニ | 吸血し、様々な病気を媒介する危険性があります。ライム病やバベシア症などが代表的です。 |
回虫 | 腸内に寄生する寄生虫です。下痢や嘔吐、腹痛などを引き起こします。子犬は特に感染しやすいです。 |
参照:獣医師監修うちの子おうちの医療辞典、あいむ動物病院、犬と猫のペット保険はFPC
消化器疾患
症状 | |
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胃腸炎 | 嘔吐や下痢が主な症状です。原因は様々で、感染症や食中毒などが考えられます。 |
膵炎 | 膵臓に炎症が起こる病気です。嘔吐や腹痛、食欲不振などの症状が現れます。 |
循環器疾患
症状 | |
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僧帽弁閉鎖不全症 | 心臓の弁が正常に機能せず、血液が逆流してしまう病気です。小型犬に多く見られます。 |
腫瘍
症状 |
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様々な部位に発生する可能性があります。良性と悪性があり、早期発見が重要です。 |
皮膚病
症状 | |
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アトピー性皮膚炎 | アレルギー反応によって引き起こされる皮膚の炎症です。かゆみや発疹、脱毛などの症状が現れます。 |
アレルギー性皮膚炎 | 特定の物質に対するアレルギー反応によって引き起こされる皮膚炎です。ノミアレルギーや食物アレルギーなどがあります。 |
参照:獣医師監修うちの子おうちの医療辞典、ワンペディア、犬と猫のペット保険はFPC
犬の病気の症状を見つけた時の対処法
愛犬にいつもと違う様子が見られたら、飼い主としては心配になりますよね。まずは落ち着いて行動することが大切です。それから症状を観察し、適切な処置を行いましょう。緊急性の高い症状の場合は、すぐに動物病院に連絡しましょう。
落ち着いて症状を観察する
症状に気づいたら、まずは落ち着いて観察しましょう。慌ててしまうと、愛犬も不安になってしまいます。いつから、どのような症状が出ているのか、症状の頻度や程度などをメモしておくと、獣医師に伝える際に役立ちます。
観察すべき項目は以下の通りです。
観察項目 | 具体例 |
---|---|
食欲 | いつもより食が進まない、全く食べない、水をたくさん飲む、水を飲まない |
排泄 | 嘔吐、下痢、血便、尿の色や量の変化、排尿時の様子 |
呼吸 | 咳、くしゃみ、呼吸の速さ、浅い呼吸、荒い呼吸 |
体温 | 平熱より高い、低い |
行動 | 元気がない、ぐったりしている、歩き方がおかしい、痛みがある仕草、痒がる、しきりに舐める、同じ場所をぐるぐる回る |
その他 | 目ヤニ、鼻水、よだれ、皮膚の変化、腫れ |
これらの症状を記録し、獣医師に正確に伝えることで、診断の助けとなります。
動物病院への連絡
症状が続く場合や悪化する場合は、すぐに動物病院に連絡しましょう。連絡する前に、観察した症状や愛犬の情報(年齢、犬種、既往歴など)をまとめておくとスムーズです。獣医師の指示に従い、適切な処置を受けましょう。時間外の場合は、夜間救急動物病院を探しましょう。
受診時の注意点
動物病院を受診する際は、以下の点に注意しましょう。
排泄物(嘔吐物、便など)があれば持参する | 原因究明に役立ちます。ビニール袋などに入れて持参しましょう。 |
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普段与えているフードの情報 | フードの種類や量、アレルギーの有無などを伝えられるように準備しておきましょう。 |
落ち着いて愛犬の様子を伝える | 正確な情報を伝えることが、適切な診断と治療につながります。 |
参照:山科みやこ動物病院
考えられる病気と受診の目安
先述のとおり、愛犬の異変に気付いたら、まずは落ち着いて症状を観察し、必要に応じて動物病院に連絡します。症状によっては一刻を争う場合もあれば、数日様子を見て良い場合もあります。ここでは、緊急性の高い症状と様子を見て良い症状、それぞれの受診目安について解説します。
緊急性の高い症状と受診の目安
以下の症状が見られた場合は、直ちに動物病院へ連絡し、指示を仰いでください。場合によっては、夜間救急動物病院の受診が必要になります。
症状 | 考えられる病気 | 受診の目安 |
---|---|---|
意識消失、痙攣、呼吸困難、チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる) | 熱中症、低血糖、中毒、てんかん発作、異物誤飲など | 直ちに |
激しい嘔吐や下痢、血便 | パルボウイルス感染症、出血性胃腸炎、異物誤飲など | 直ちに |
ぐったりして動かない、食欲が全くない | 感染症、重度の脱水症状、内臓疾患など | 直ちに |
腹部が膨張している、苦しそうにしている | 胃捻転、鼓腸など | 直ちに |
骨折、脱臼、重度の出血 | 交通事故、高所からの落下など | 直ちに |
呼吸が速い、浅い、開口呼吸をしている | 気胸、肺炎、肺水腫など | 直ちに |
排尿困難、頻尿、血尿 | 尿路結石、膀胱炎、尿道炎など | 直ちに |
これらの症状は、命に関わる可能性があります。一刻も早く獣医師の診察を受けましょう。
参照:乙訓どうぶつ病院
様子を見て良い症状と受診の目安
以下の症状は、必ずしも緊急性を要するものではありませんが、症状が続く場合や悪化する場合は動物病院を受診しましょう。ただし、子犬や老犬、持病のある犬の場合は、症状が軽度でも早めに受診することをおすすめします。
症状 | 考えられる病気 | 受診の目安 |
---|---|---|
軽度のくしゃみ、鼻水 | 風邪、アレルギー性鼻炎など | 数日様子を見て、改善しない場合 |
軽度の食欲不振 | 環境の変化、ストレスなど | 数日様子を見て、改善しない場合 |
嘔吐 | 食べ過ぎ、消化不良など | 嘔吐が続く場合、ぐったりしている場合はすぐに受診 |
軟便 | ストレス、食事の変化など | 下痢が続く、血便が出る場合はすぐに受診 |
皮膚のかゆみ、軽度の発疹 | ノミ、ダニ、アレルギーなど | かゆみが激しい、脱毛が見られる場合は受診 |
目ヤニ | 結膜炎、アレルギーなど | 目ヤニが続く、目が赤い場合は受診 |
上記はあくまでも目安です。愛犬の状態をよく観察し、少しでも心配なことがあれば、獣医師に相談することをおすすめします。早期発見・早期治療は、愛犬の健康を守る上で非常に重要です。迷った時は、動物病院に相談してみましょう。
参照:横須賀市つだ動物病院、つるまき動物病院院長ブログ、福岡動物医療センターグループ、ペット&ファミリー損害保険株式会社、ペットサポートのPS保険
犬の病気の予防方法
愛犬の健康を守るためには、日頃からの予防が重要です。様々な病気のリスクを減らすために、以下の予防策を実践しましょう。
ワクチン接種
ワクチン接種は、感染症から愛犬を守る最も効果的な方法です。特に子犬の時期は免疫力が弱いため、適切な時期にワクチン接種を行うことが重要です。混合ワクチンでは、ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス感染症2型、犬コロナウイルス感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症、レプトスピラ症といった複数の感染症を予防できます。狂犬病予防ワクチンは、法律で接種が義務付けられています。獣医師と相談し、愛犬に最適なワクチン接種スケジュールを立てましょう。
参考:こやまレリーフ動物病院
フィラリア予防
フィラリアは蚊を媒介して感染する寄生虫です。心臓や肺動脈に寄生し、重症化すると呼吸困難や心不全を引き起こす可能性があります。フィラリア予防薬は、錠剤、チュアブルタイプ、滴下タイプなど様々な種類があります。愛犬のライフスタイルや好みに合わせて、獣医師と相談しながら適切な予防薬を選びましょう。予防期間は蚊の発生時期に合わせて、通常は1ヶ月に1回投与します。地域によって蚊の発生時期が異なるため、獣医師の指示に従いましょう。
参考:越谷どうぶつ病院
ノミ・マダニ駆除
ノミやマダニは、皮膚炎やアレルギー、様々な感染症を引き起こす可能性があります。定期的なノミ・マダニ駆除は、愛犬の健康を守る上で重要です。駆除薬には、スポットオンタイプ、首輪タイプ、スプレータイプ、錠剤タイプなどがあります。愛犬の月齢や体重、生活環境に合わせて、獣医師と相談しながら適切な駆除薬を選びましょう。
適切な食事と運動
バランスの取れた食事は、愛犬の健康維持に欠かせません。年齢や体格、活動量に合わせたドッグフードを選び、適切な量を与えましょう。肥満は様々な病気のリスクを高めるため、食事管理と合わせて適度な運動も重要です。毎日散歩に連れて行ったり、ドッグランで遊ばせたりするなど、愛犬が楽しく運動できる機会を設けましょう。運動不足はストレスの原因にもなるため、愛犬の性格や体力に合わせた運動量を心がけましょう。
参照:けいこくの森動物病院
定期的な健康診断
定期的な健康診断は、早期発見・早期治療につながるため、非常に重要です。特にシニア犬は、加齢とともに様々な病気を発症しやすくなるため、年に1~2回の健康診断を受けることをおすすめします。健康診断では、身体検査、血液検査、尿検査、糞便検査などを行い、必要に応じて、レントゲン検査や超音波検査なども行います。愛犬の健康状態を把握し、病気の兆候を早期に発見することで、適切な治療につながります。
年齢 | 推奨される健康診断の頻度 |
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7歳未満 | 年1回 |
7歳以上 | 年2回 |
これらの予防策を継続的に行うことで、愛犬の健康を守り、長く一緒に過ごせられます。何か気になる症状が見られた場合は、すぐに動物病院に相談しましょう。
まとめ
この記事では、犬のよくある症状から考えられる病気、そして受診の目安について解説しました。食欲不振、嘔吐、下痢といった比較的よく見られる症状から、痙攣や呼吸困難といった緊急性の高い症状まで、幅広く網羅しています。各症状に複数の病気が考えられるため、早見表を活用して愛犬の状態を把握し、適切な処置に繋げてください。
特に、呼吸困難、痙攣、意識消失といった症状は一刻を争う場合もあります。迷わず、すぐに動物病院へ連絡しましょう。また、慢性的な症状のように見えても、実は重篤な病気が隠れている可能性もあります。少しでも異変に気づいたら、様子を見すぎることなく獣医師に相談することが大切です。
早期発見・早期治療は、愛犬の健康を守る上で非常に重要です。普段からの観察、定期的な健康診断、そして予防策をしっかりと行い、愛犬との健康的な生活を送りましょう。